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 【 杉山其日庵著『浄瑠璃素人講釈』続編 】

杉山其日庵著『浄瑠璃素人講釈』(大正15年11月初版発行)が、
「黒白」という雑誌に連載されていたものをまとめた物であることはよく知られていますが、
私はこの雑誌の実物を見たことがありませんでした。
雑誌には出たけれど本には収録されなかったものや、収録の際に加筆訂正されたものがなかったかなど、
『素人講釈』ファンとしては興味が尽きません。
福岡県立図書館の「杉山文庫・夢野久作資料」のリストの中に、
雑誌「黒白」の第1号(大正6年)から47号(大正10年2月)までの記載がありますが、
昭和63年に福岡を訪れた際には、所在不明とのことでした。
『素人講釈』の初出誌を是非見たいものだと思い続けていたのですが、
叶わぬまま十年以上が経ってしまいました。
ところがひょんなことで、昨年、国立国会図書館に「黒白」の一部が所蔵されていることを知り、
早速閲覧してみると、『素人講釈』刊行以後にも、それを補う形で著者・杉山茂丸が書き継いでいたこと、
つまり『素人講釈』には続編があったことが分かりました。
残念ながら、国会本は下記のように揃いではないので、総てを網羅してはおりませんが、
『素人講釈』刊行時には出版されていなかった『近世邦楽年表 義太夫節之部』(昭和2年5月刊)の成果を取り入れた記述も多く、
有意義なものと思います。
国会本の中で、『素人講釈』刊行以後の8編をテキスト化しましたので、ご利用いただければ幸いです。
なお、テキスト化に伴って、読み易くするために句読点を整理し、適宜改行を施しました。
学術的な資料としてご利用の場合は、当然のことですが、原本に拠られますよう、お願いします。

国立国会図書館蔵 雑誌「黒白」(NDL請求記号:Z71−B879)
所蔵巻号:8巻3号〔通号80号〕(大正13年6月)〜12巻4号〔通号126号〕(昭和3年4月)
欠号:83,88,96,107〜113,115〜117,119,120号

*現況は、全32冊を、大正13、14、15、昭和2・3年の単位で合本(4分冊)されています。
なおこの本は、平成10年11月18日付けで、国会図書館に収蔵されたものです。

テキスト化したもの

(1) 絵本太功記  夕顔棚の段=「黒白」第114号(昭和2年4月)
(2) 鎌倉三代記  三浦恩愛の段=「黒白」第118号(昭和2年8月)
(3) 心中紙屋治兵衛 新地茶屋の段=「黒白」第121号(昭和2年11月)
(4) 心中紙屋治兵衛 紙屋内の段=「黒白」第122号(昭和2年12月)
(5) 壇浦兜軍記  阿古屋琴責の段=「黒白」第123号(昭和3年1月)
(6) 苅萱桑門筑紫★  守宮酒の段=「黒白」第124号(昭和3年2月)
(7) 和田合戦女舞鶴  市若切腹の段=「黒白」第125号(昭和3年3月)
(8) 御所桜堀川夜討  弁慶上使の段=「黒白」第126号(昭和3年4月)
 

                         提供者:岡目八目 様(2000.07.22)