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【 渥美清太郎 義太夫劇年表 】

(2022.02.09)
提供者:ね太郎
 愛劇家重宝録 義太夫劇年表 渥美清太郎 演芸画報 第33年8号 1939年8月1日 pp.52-60
沢山ある義太夫劇のうち、特に歌舞伎と関係の深いものだけ摘出して年代順に並べて見ました。
これ以外は歌舞伎と縁が浅いと申してもよろしいのです。
 【一項を一行に収めるよう組み版されている。
 【[ ]内は近松全集などによる補訂】
 
出世景清しゆつせかげきよ近松門左衛門貞享3.2
[2年]
竹本近松義太夫提携第一作。九世団十郎が改作上演
松風村雨束帯鑑まつかぜむらさめそくたいかがみ近松門左衛門元禄7.3
[宝永4後半]
竹本行平と松風村雨の情話。大切に狂言の「靭猿」
釈迦如来誕生会しやかによらいたんじやうゑ近松門左衛門元禄8.4
[正徳4秋以前]
竹本釈迦誕生より涅槃まで。壇特山と槃特の件名高し
当流小栗判官たうりうをぐりはんぐわん近松門左衛門元禄11.2
[正徳4.9以前]
竹本小栗判官の受難、照手姫の辛苦。伊井が演じた事あり。
源氏烏帽子折げんじえぼしをり近松門左衛門元禄12.1竹本常盤御前大和落より牛若元服まで。一中節「妹が宿」原作
道中評判敵討だうちうひやうばんのかたきうち不詳元禄15.9竹本前年行はれた石井兄弟亀山の仇討を脚色した最初の作
最明寺殿百人上臈さいみやうじどのひやくにんぢやうらう近松門左衛門元禄16.3竹本時頼発心、女鉢の木。月小夜嫉妬の件は歌舞伎で上演
曾根崎心中そねざきしんぢう近松門左衛門元禄16.5竹本四月にありしお初徳兵衛の情死を脚色。お初徳兵衛の嚆矢
薩摩唄さつまうた近松門左衛門宝永1.1竹本芝居で小万源五兵衛の嚆矢。西鶴の五人女と同じ材料
雪女五枚羽子板ゆきをんなごまいはごいた近松門左衛門宝永2.7
[5.1]
竹本赤松満祐の謀反、藤内兄弟の忠義。帝劇で演じた事あり
心中二枚絵草紙しんぢゆうにまいゑざうし近松門左衛門宝永3.3
[3.1]
竹本天満屋お島と市郎右衛門の情死。帝劇で演じた事あり。
碁盤太平記ごばんたいへいき近松門左衛門宝永3.5竹本赤穂義士劇の嚆矢。大星閑居と討入。鴈治郎改訂上演
緋縮緬卯月紅葉ひぢりめんうづきのもみぢ近松門左衛門宝永3
[夏]
笠屋与兵衛と妻お亀の情死。お亀与次兵衛劇の嚆矢
堀川波の鼓ほりかはなみのつゞみ近松門左衛門宝永4.2
[3後半]
竹本宝永三年実在の小倉彦九郎女敵討を脚色。歌舞伎に入る
酒呑童子枕言葉しゆてんどうじまくらのことのは近松門左衛門宝永4.9
[7.5以前]
竹本頼光大江山の鬼退治。歌舞伎四天王物原拠。一中節原作
心中重井筒しんぢうかさねゐづゝ近松門左衛門宝永4冬か竹本宝永元年のお房徳兵衛情死を脚色。同題狂言の嚆矢
椀久末松山わんきうすゑのまつやま紀海音宝永5.3
[7.4以前]
豊竹実在の椀屋久兵衛狂乱を脚色原作。歌舞伎に移入
心中万年草しんぢうまんねんぐさ近松門左衛門宝永5.4
[7.4]
竹本高野山小姓粂之助とお梅の情死。帝劇で上演した事あり
待夜小室節まつよのこむろぶし近松門左衛門宝永5か
[4末]
竹本丹波与作と関の小万。重の井子別れ原作。歌舞伎に入る
傾城反魂香けいせいはんごんかう近松門左衛門宝永5か竹本狩野四郎次郎と遠山、不破名古屋。吃又平の原作
淀鯉出世瀧徳よどこひしゆつせのたきのぼり近松門左衛門宝永5か竹本淀屋辰五郎欠所事件を脚色。左団次が上演せし事あり
五十年忌歌念仏ごじふねんきうたねんぶつ近松門左衛門宝永6.1
[4.7以前]
竹本お夏清十郎追善狂言。同題書替物の原拠。一中節原作
今宮の心中いまみやのしんぢゆう近松門左衛門宝永7.1
[正徳1夏]
竹本おきさ次郎兵衛情死を脚色。歌舞伎へ移入。伊井も上演
孕常盤はらみときは近松門左衛門宝永7.8竹本牛若弁慶五条橋。矢矧の里。左団次が明治座で上演
冥土の飛脚めいどのひきやく近松門左衛門正徳1.3竹本梅川忠兵衛の封切より新口村。同題書替の原作。歌舞伎移入
吉野都女楠よしのゝみやこをんなくすのき近松門左衛門正徳1.9
[宝永7]
竹本小山田が義貞身替。正行教訓。「女楠」と「求女塚」の原作
夕霧阿波鳴渡ゆふぎりあはのなると近松門左衛門正徳1末か
[2初春]
竹本夕霧伊左衛門吉田屋より夕霧の死まで。「廓文章」原作
嫗山姥こもちやまうぱ近松門左衛門正徳2.7竹本荻の家八重桐、公時の生立、四天王。早くより歌舞伎に入る
長町女腹切ながまちをんなはらきり近松門左衛門正徳2か
[秋]
竹本叔母が甥の為に腹切の事件。お花半七物の嚆矢。歌舞伎移入
天神記てんじんき近松門左衛門正徳3.2
[4.1]
竹本菅公配流。十六夜忠死。義太夫物が歌舞伎移入の嚆矢か
粲静胎内捃ふたりしづかたいないさぐり近松門左衛門正徳3か
[閏5]
竹本堀河夜討。大津次郎の忠義。静の難儀。「安宅関」原作
傾城三度笠けいせいさんどがさ紀海音正徳3.10豊竹
[曾根崎新地]
同材異作の梅川忠兵衛。現菊五郎が改訂上演した事あり
鬼鹿毛無佐志鐙おにかげむさしあぶみ紀海音正徳3.12
[宝永7秋]
豊竹小栗判官に世界を拵へし赤穂義士劇。歌舞伎より改作
相撲入道千疋犬さがみにふどうせんびきいぬ近松門左衛門正徳4.4竹本高時に准へて犬公方を脚色。安東聖秀切腹。歌舞伎移入
大経師昔暦だいきやうじむかしごよみ近松門左衛門正徳5春竹本おさん茂兵衛姦通事件。歌舞伎移入。同材書替の原作
生玉心中いくたましんぢゆう近松門左衛門正徳5.8
[5.5]
竹本柏屋おさが茶碗屋嘉平次情死。羽左衛門演じた事あり
国性爺合戦こくせんやかつせん近松門左衛門正徳5.11竹本和藤内の事蹟。三ヶ年続演。早くより歌舞伎へ入る
国性爺後日合戦こくせんやごにちかつせん近松門左衛門享保2.2竹本国性爺、台湾へ渡つての後日。左団次明治座にて演じたり
槍の権三重帷子やりのごんざかさねかたびら近松門左衛門享保2.8竹本笹野権三とお才の姦通事件を脚色。同材書替狂言原作
寿門松ねびきのかどまつ近松門左衛門享保3.1竹本吾妻与次兵衛、難与平。歌舞伎移入。同材書替狂言原作
日本振袖始につぽんふりそではじめ近松門左衛門享保3.2竹本簸の川上にて大蛇を退治の件。早くより歌舞伎に移入
曾我会稽山そがくわいけいざん近松門左衛門享保3.7竹本曾我討入当日の朝より夜中まで。明治中期に歌舞伎へ入る
傾城酒呑童子けいせいしゆてんどうじ近松門左衛門享保3.10竹本本年九月の茨木屋幸齋事件を脚色。大正度歌舞伎へ入る
博多小女郎浪枕はかたこぢよらうなみまくら近松門左衛門享保3.11
[3.12]
竹本本年十月の抜荷買一件を脚色。毛剃と宗七。早く歌舞伎へ入
本朝三国志ほんてうさんごくし近松門左衛門享保4.2竹本光秀謀反、山崎合戦より朝鮮征伐迄。太閤記物の原拠となる
平家女護島へいけによごのしま近松門左衛門享保4.8竹本俊寛鬼界ヶ島、常盤牛若旗揚。早くより歌舞伎に移入さる
双生隅田川ふたごすみだがは近松門左衛門享保5.8竹本梅若松若猿島惣太。歌舞伎の「角田川物」「法界坊」等の原拠
心中天網島しんぢゆうてんのあみじま近松門左衛門享保5.12竹本本年十月の小春治兵衛情死を脚色。同材書替狂言の原作
女殺油地獄をんなころしあぶらぢごく近松門左衛門享保6.7竹本河内屋与兵衛のお吉殺し大正期に歌舞伎に入り評判になる
信州川中島合戦しんしうかはなかじまかつせん近松門左衛門享保6.8竹本甲越軍記。輝虎配膳と勘助母の死。早くより歌舞伎に入る
心中宵庚申しんぢゆうよひかうしん近松門左衛門享保7.4竹本前年実在のお千代半兵術情死を脚色。同材書替狂言の原作
大塔宮曦鎧おほたふのみやあさひのよろひ近松門左衛門享保8.2竹本斎藤太郎左衛門身替り音頭。早くより歌舞伎に移入さる
関八州繋馬くわんはつしうつなぎうま近松門左衛門享保9.1竹本近松絶筆。相馬良門謀反。前太平記物歌舞伎の粉本となる
昔米万石通むかしごめまんごくどほし西沢一風享保10.1豊竹長吉長五郎廓の達引。同材狂言の原拠、双蝶々の原作
大内裏大友真鳥だいだいりおほとものまとり竹田出雲享保10.9竹本大友真鳥謀反、助八の身替り。早くより歌舞伎に移入さる
北条時頼記ほうでうじらいき西沢一風享保11.4豊竹時頼発心。女鉢の木の件だけは早く歌舞伎に入り行はる
敵討御未刻太鼓かたきうちおやつのたいこ長谷川千四享保12.1竹本貞享四年磯貝父子御堂前仇討を脚色。同材書替狂言の原作
加賀国篠原合戦かゞのくにしのはらかつせん竹田出雲享保13.5竹本義仲と巴御前白髪の実盛。早く歌舞伎移入。近江のお兼原作
京土産名所井筒きやうみやげめいしよゐづゝ長谷川千四享保14.11竹本古今彦葱と花屋惣八。同材書替狂言原拠。歌舞伎に入る
三浦大助紅梅靮みうらのおほすけこうばいのたづな長谷川千四享保15.2竹本石橋山の戦、三浦大助戦死。石切梶原の原作、歌舞伎移入
須磨都源平躑躅すまのみやこげんべいつゝじ文耕堂享保15.11竹本扇屋熊谷の原作、鷲尾三郎閑居。早くより歌舞伎移入
鬼一法眼三略巻きいちはふげんさんりやくのまき文耕堂享保16.9竹本弁慶生立、大蔵卿.早く歌舞伎に入り菊畑最も行はる
壇浦兜軍記だんのうらかぶとぐんき文耕堂享保17.9竹本景清の復讐談。阿古屋の琴責は早くから歌舞伎に移入さる
車還合戦桜くるまがへしかつせんざくら文耕堂享保18.4竹本正成死後の南北朝。大森彦七佯狂の件は早くより歌舞伎に入
那須与市西海硯なすのよいちさいかいすゞり並木宗助享保19.8豊竹那須与市と宗清の義理譚。早く歌舞伎に入り乳母争ひ有名
芦屋道満大内鑑あしやだうまんおほうちかゞみ竹田出雲享保19.10竹本葛の葉子別れ。改訂物ながら好評、歌舞伎でも流行作の一となる
南蛮鉄後藤目貫なんばんてつごとうのめぬき並木宗助享保20.2豊竹大坂陣を仮作。後の「義経腰越状」五斗の鉄砲は歌舞伎で流行
苅萱桑門筑紫𨏍かるかやどうしんつくしのいへづと並木宗助享保20.8豊竹いもり酒と石童丸別れ。早くより歌舞伎に入り今に伝はる
和田合戦女舞鶴わだかつせんをんなまひづる並木宗助元文1.3豊竹和田北条の争ひ。早く歌舞伎に入り板額門破りの件名高し
敵討襤褸錦かたきうちつゞれのにしき文耕堂元文1.5竹本歌舞伎「非人仇討」の人形化。逆輸入して大晏寺堤の件今流行
御所桜堀河夜討ごしよざくらほりかはようち文耕堂元文2.1竹本土佐坊と堀河夜討。藤弥太と弁慶上使は早くより歌舞伎に入
釜淵双級巴かまがふちふたつどもゑ並木宗助元文2.7豊竹石川五右衛門釜入。歌舞伎に入り他作と混合、今に行はる
太政入道兵庫岬だじやうにふだうひやうごのみさき竹田小出雲元文2.10竹本兵庫築島の物語。寺子屋甚内と教経裁判の件歌舞伎で有名
行平磯馴松ゆきひらそなれのまつ文耕堂元文3.1竹本松風村雨と海女小藤。歌舞伎移入。踊「浜松風」は此大詰なり
小栗判官車街道をぐりはんぐわんくるまかいだう文耕堂元文3.8竹本小栗と照手姫。早く歌舞伎に入り太郎人形廻しの件名高し
茜染野中の隠井あかねぞめのなかのこもりゐど原田由良助元文3.10豊竹梅の由兵衛長吉殺し。聚楽町の件は早く京坂歌舞伎に入る
ひらがな盛衰記ひらがなせいすゐき文耕堂元文4.4竹本先陣問答、逆櫓、梅ヶ枝。歌舞伎に早く入り大いに行はる
鶊山姫捨松ひばりやまひめすてまつ並木宗輔元文5.2豊竹中将姫雪責。早く歌舞伎に入り、明治期には改作上演さる
今川本領猫魔館いまがはほんりやうねこまたやかた文耕堂元文5.4竹本今川了俊猫騒動。歌舞伎に入り、同材狂言に影響を多く与ふ
新薄雪物語しんうすゆきものがたり文耕堂寛保1.5竹本三人笑と鍛冶屋。早く歌舞伎に入り評判。改作狂言数種あり
播州皿屋敷ばんしうさらやしき為永太郎兵衛寛保1.7豊竹青山鉄山のお菊殺し。歌舞伎に入つて東西に改作数多あり
田村麿鈴鹿合戦たむらまろすゞかかつせん浅田一鳥寛保1.9豊竹田村麿鬼神退治阿漕の平次の件は早く歌舞伎に入り行はる
花衣いろは縁起はなごろもいろはえんぎ三好松洛寛保2.2竹本玄恕上人事蹟。昔は鷲の段など歌舞伎でも大流行したもの
男作五雁金をとこだていつゝかりがね竹田出雲寛保2.7竹本雁金文七等五人男の暴行事件。歌舞伎に入り改作沢山あり
入鹿大臣皇都諍いるかだいじんみやこあらそひ竹田出雲寛保3.4竹本入鹿征伐の三人片輪。歌舞伎に入つて「庭訓妹脊山実記」
丹州爺打栗たんしうてゝうちぐり竹田出雲寛保3.5竹本白髪の金時。早く歌舞伎に入り稽古所と足柄山の場は有名
久米仙人吉野桜くめのせんにんよしのざくら為永太郎兵衛寛保3.8豊竹久米の王子と太子傅。歌舞伎の「鳴神」を其まゝ取入れたり
児源氏道中軍記ちこげんじだうちうぐんき竹田出雲延享1.3竹本牛若の生立。早く歌舞伎に入り殊に熊坂山中屋の場有名
潤色江戸紫じゆんしよくえどむらさき為永太郎兵衛延享1.4豊竹お七吉三の情話。中に江戸歌舞伎矢の根奏入れたるが有名
軍法富士見西行ぐんぱふふじみさいぎやう並木千柳延享2.2竹本西行義仲へ諌言。松並靱負忠義。早く歌舞伎に入り行はる
夏祭浪花鑑なつまつりなにはかゞみ並木千柳延享2.7竹本歌舞伎の「宿無団七」より暗示を得た作。歌舞伎でも大流行
楠昔噺くすのきむかしばなし並木千柳延享3.1竹本五節句に分けたる楠公の忠義譚。どんぶらこの件歌舞伎移入
菅原伝授手習鑑すがはらでんじゆてならひかゞみ竹田出雲延享3.8竹本菅公伝。直ちに歌舞伎に入つて大流行を極め今猶行はる
義経千本桜よしつねせんぼんざくら竹田出雲延享4.11竹本義経記の名作。直に歌舞伎に入つて流行を極め今猶行はる
容競出入湊すがたくらべでいりのみなと並木丈輔寛延1.1豊竹歌舞伎の黒船忠右権門奄改作。逆輸入して大に行はる
東鑑御狩巻あづまかゞみみかりのまき並木丈輔寛延1.7豊竹曾我物。早く歌舞伎に入り朝比奈大藤内の件殊に有名
仮名手本忠臣藏かなでほんちうしんぐら竹田出雲寛延1.8竹本上演中直に三都及伊勢の歌舞伎に入り第一の独参湯劇となる
摂州渡辺橋供養せつしうわたなべはしくやう並木丈輔寛延1.11豊竹宗盛熊野と袈裟盛遠。其まゝ歌舞伎に入り又改作さる
八重霞浪花浜荻やへがすみなにはのはまをぎ並木丈輔寛延2.3豊竹三月実在のかしく兄殺しを脚色。同材書替狂言の原作
双蝶々曲輪日記ふたつてふ/\くるわにつき竹田出雲寛延2.7竹本長吉長五郎の達引。歌舞伎に入り無数の書替狂言を生む
日蓮記児硯にちれんきちごすゞり並木宗輔寛延2.10肥前勘作住家七里姫。歌舞伎の日蓮記各種書替狂言の原本
物ぐさ太郎ものぐさたらう浅田一鳥寛延2.11豊竹不破名古屋と千の利休。歌舞伎に入り明治前まで流行す
源平布引瀧げんぺいぬのびきのたき並木千柳寛延2.11竹本実盛物語と松浪琵琶。歌舞伎に早く入つて現時猶行はる
玉藻前曦袂たまものまへあさひのたもと浪岡橘平宝暦1.1豊竹玉藻前妖狐と鷲塚金次。歌舞伎に入つて書替を生む
恋女房染分手綱こひにようばうそめわけたづな吉田冠子宝暦1.2竹本近松「小室節」増補。歌舞伎の流行物として大いに行はる
一谷嫩軍記いちのたにふたばぐんき並木宗輔宝暦1.12豊竹熊谷の須磨浦と陣屋。歌舞伎に入つて熊谷劇の定本と成
伊達錦五十四郡だてにしきごしふしぐん竹田外記宝暦2.11竹本奥州平泉の義経。錦戸兄弟士農工商の場歌舞伎に名高し
倭仮名在原系図やまとがなありはらけいづ浅田一鳥宝暦2.12豊竹蘭平物狂と飛脚忠次の場、歌舞伎に名高く踊ともなる
愛護若名歌勝鬨あいごのわかめいかのかちどき竹田外記宝暦3.5竹本愛護若同種劇の中の白眉。歌舞伎にも入つて有名なり
相馬太郎莩文談さうまたらうめばえぶんだん並木永輔宝暦4.2豊竹将軍太郎良門の謀反。江戸歌舞伎の顔見世狂言に書替多し
小野道風青柳硯おのゝだうふうあおやぎすゞり竹田出雲宝暦4.10竹本道風蛙と良実の内有名。歌舞伎に入つて現在まで伝はる
姫小松子日廼遊ひめこまつねのひのあそび吉田冠子宝暦7.2竹本女俊寛と俊寛洞ヶ嶽物語。明治前まで歌舞伎で毎年上演
薩摩歌妓鑑さつまうたげいこかゞみ吉田冠子宝暦7.9竹本小万源五兵衛へ曾根崎五人斬を持込む。歌舞伎に影響あり
祇園祭礼信仰記ぎをんさいれいしんかうき中邑阿契宝暦7.12豊竹松永久秀と秀吉。早く歌舞伎に入り是齋屋金閣寺有名
敵討崇禅寺馬場かたきうちそうぜんじばゞ竹田小出雲宝暦8.3竹本遠城兄弟崇禅寺馬場。歌舞伎に入つて特に多く行はる
日高川入相花王ひだかがはいりあひざくら竹田小出雲宝暦9.2竹本安珍清姫道成寺と将門記。歌舞伎に改作大いに行はる
大平記菊水廼巻たいへいききくすゐのまき竹田小出雲宝暦9.9竹本南北朝に准へし慶安太平記。歌舞伎に移入、同材の原本
極彩色娘扇ごくさいしきむすめあふぎ二歩堂宝暦10.7竹本お夏清十郎と朝比奈藤兵衛。盲目兵助の件歌舞伎移入
祇園女御九重錦ぎをんにようごこゝのへにしき若竹笛躬宝暦10.12豊竹清盛生立と棟の由来。早く歌舞伎に入つて書替狂言あり
由良湊千軒長者ゆらのみなとせんげんちやうじや竹田小出雲宝暦11.5竹本三荘太夫劇の中で最も行はれ歌舞伎へも早く移入された
岸姫松轡鑑きしのひめまつくつわかゞみ豊竹応律宝暦12.4豊竹巴御前、齋藤五郎、順礼おそよ。歌舞伎にも飯原館行はる
奥州安達原あうしうあだちがはら竹田和泉宝暦12.9竹本前九年合戦後の貞任兄弟と義家。歌舞伎でも流行曲の一
天竺徳兵衛郷鏡てんぢくとくべゑさとのすがたみ近松半二宝暦13.4竹本天竺徳兵衛蟇の妖術。鶴屋南北の天徳の原本となる
傾城阿古屋の松けいせいあこやのまつ近松半二明和1.1蛭子屋景清と維盛。黙阿弥「音駒山守護源氏」の原作なり
嬢景清八島日記むすめかげきよやしまにつき若竹笛躬明和1.10豊竹日向島の景清。早く歌舞伎に入り、また改訂せらる
蘭奢待新田系図らんじやたいにつたけいづ近松半二明和2.2竹本義貞身替りと大森彦七。歌舞伎で田楽屋助市の件有名
菊池大友姻袖鏡きくちおほともこんれいそでかゞみ近松半二明和2.9竹本岩倉宗玄折琴姫。歌舞伎に移入され時に清玄の台本と成
本朝廿四孝ほんてうにじふしかう近松半二明和3.1竹本川中島合戦。殆んど全曲とも歌舞伎に入つて今に行はる
太平記忠臣講釈たいへいきちうしんかうしやく近松半二明和3.10竹本赤穂義士銘々伝。十段とも歌舞伎に移入、多くの原本と成
花軍寿永春はないくさじゆえいのはる吉田冠子明和4.8竹本継信身替り。黙阿弥「音駒山守護源氏」継信亡霊の原本
関取千両幟せきとりせんりやうのぼり近松半二明和4.8竹本岩川次郎吉と鉄ヶ嶽の達引。歌舞伎に入改訂され又新内原作
三日太平記みつかたいへいき近松半二明和4.12竹本本能寺より光秀滅亡まで。松下住家の場は歌舞伎で有名
染模様妹脊門松そめもやういもせのかどまつ菅専助明和4.12北堀江油屋質店で久作の革足袋とチヨイノセは歌舞伎で評判
傾城阿波の鳴門けいせいあはのなると近松半二明和5.6竹本阿波の十郎兵衛。順礼唄の件名高く歌舞伎にも早く移入
関取二代勝負附せきとりにだいのしようぶづけ八民平七明和5.9亀谷秋津島鬼ヶ嶽角力の達引。歌舞伎に入り改訂今に伝存す
紙子仕立両面鑑かみこじたてりやうめんかゞみ菅専助明和5.12北堀江揚巻助六の情話。先代仁左衛門の手によつて歌舞伎に移入
振袖天神記ふりそでてんじんき近松半二明和6.1竹本菅丞相の生立。金岡遍照を出し、歌舞伎でも昔は評判
裙重浪花八文字つまがさねなにはのはちもんじ八民平七明和2年綱太夫梅川忠兵衛とお妻八郎兵衛。仁左衛門「鰻谷」の原本
近江源氏先陣館あふみげんじせんぢんやかた近松半二明和2.12竹田大坂冬の陣。早く歌舞伎に入つて陣屋の場が有名
神霊矢口渡しんれいやぐちのわたし福内鬼外明和7.1外記新田義興と足利の争闘。兵庫物語とお船の件歌舞伎で有名
鎌倉三代記かまくらさんだいき近松半二明和7.5竹田初名「太平頭鍪飾」歌舞伎に入り糸川村の場特に有名
妹脊山婦女庭訓いもせやまをんなていきん近松半二明和8.1竹田入鹿退治。名作。早く歌舞伎に入り常に全篇上演さる
艶姿女舞衣はですがたをんなまひぎぬ竹本三郎兵衛安永1.12豊竹三勝半七酒屋の段は有名なれど歌舞伎に入りしは近頃なり
摂州合邦辻せつしうがつぱふがつぢ菅専助安永2.2北堀江玉手御前の死。歌舞伎にも入つたれど流行せしは明治以後
伊達娘恋緋鹿子だてむすめこひのひがのこ菅専助安永2.4同右八百屋お七の改作。歌舞伎にも入り改訂。櫓のお七の原作
けいせい恋飛脚けいせいこひのひきやく菅専助安永2.12豊竹「冥土の飛脚」の改作。現時歌舞伎に伝はる新口村はこれ
花襷会稽褐布染はなだすきくわいけいのかちんぞめ菅専助安永3.8北堀江佐崎巖柳月本民部。早く歌舞伎に入つて仇討物の代表作たり
軍術出口柳ぐんじゆつでぐちのやなぎ菅専助安永4.1北堀江天草戦記と柳沢騒動。直に歌舞伎化され明治前まで行はる
競伊勢物語はなくらべいせものがたり奈河亀助安永4.8歌舞伎所演の物を浄瑠璃に刊行。のち人形となる有名なり
忠臣伊呂波実記ちうしんいろはじつき福内鬼外安永4.7肥前忠臣藏の銘々伝。「茅野三平切腹」の原作。歌舞伎にも移入
恋娘昔八丈こひむすめむかしはちぢやう松貫四安永4.9
[4.8]
外記白子屋おくまの出来事を脚色。歌舞伎に移入。新内にも入る
三国無双奴請状さんごくぶさうやつこのうけじやう近松東南安永5.4北堀江光秀と高松城水攻の太閤記物。水攻の件のみ歌舞伎に有名
桂川連理柵かつらがはれんりのしがらみ菅専助安永5.10北堀江前作を増補したお半長右衛門。京坂歌舞伎に入つて伝はる
糸桜本町育いとさくらほんちやうそだち紀上太郎安永6.3外記小糸お房と佐七。江戸歌舞伎と殆んど同時に上演書替沢山あり
伊賀越乗掛合羽いがごえのりかけがつぱ近松東南安永6.3北堀江前年歌舞伎で当りし脚本の義太夫化伊賀越仇討唐木政右衛門
心中紙屋治兵衛しんぢゆうかみやぢへゑ近松半二安永7.4西芝居「天網島」改作。歌舞伎にてはこれを原として改作上演す
道中亀山噺だうちゆうかめやまばなし近松半二安永7.7北新地亀山仇討。歌舞伎に入つて寧ろ亀山物書替狂言の粉本となる
往古曾根崎村噂むかし/\そねざきむらのうはさ近松半二安永7.9西芝居お初徳兵衛の新作。歌舞伎にては此方を採用。教興寺村の段有名
伊達競阿国戯場だてくらべおくにかぶき達田弁二安永8.3江戸豊竹江戸歌舞伎伊達騒動の浄瑠璃化。累の件は歌舞伎に逆移入
驪山比翼塚めぐろひよくづか源平藤橘安永8.7肥前権八小紫。歌舞伎にては比翼塚物の原作として種々改訂
碁太平記白石噺ごたいへいきしらいしばなし紀上太郎安永9.1外記宮城野信夫と慶安太平記。直に歌舞伎に入り揚屋の場有名
新板歌祭文しんぱんうたさいもん近松半二安永9.9竹本お染久松野崎村。歌舞伎に入り特に書替の原作として重用
加々見山旧錦絵かゞみやまこきやうのにしきゑ容揚黛天明2.1外記尾上岩藤草履打。直に歌舞伎に入り種々改訂今日に至る
替唱歌糸の時雨かへしやうがいとのしぐれ近松半二天明2.3竹本古今彦三の決定本。歌舞伎に入り書替同材狂言の原となる
吾妻海道茶屋娘あづまかいだうちややむすめ若竹笛躬天明2.9北堀江日本駄右衛門。歌舞伎にも入り又黙阿弥「小狐礼三」の原本
伊賀越道中双六いがごえだうちうすごろく近松半二天明3.4竹本「乗掛合羽」改作。沼津岡崎名高し。歌舞伎にも其まゝ移入
内百番富士太鼓うちひやくばんふじだいこ松貫四天明3.10肥前富士浅間の改訂物。江戸浄瑠璃ながら上方歌舞伎に移入
伽羅先代萩めいぼくせんだいはぎ松貫四天明5.1結城同題上方歌舞伎を改作。明治以後却つて歌舞伎に逆移入す
近頃河原の達引ちかごろかはらのだてひき為川宗輔天明5.5肥前お俊伝兵衛。堀川の与次郎歌舞伎に移入。この時初演に非ず
比良嶽雪見陣立ひらがたけゆきみのぢんどり芝屋芝叟天明6.6東芝居賎ヶ嶽七本槍。其まゝ歌舞伎に入りまた書替の原作となる
彦山権現誓助剣ひこさんごんげんちかひのすけだち梅野下風天明6.10東芝居毛谷村六助。歌舞伎に移入、現今に伝はりまた書替あり
花上野誉の石碑はなのうへのほまれのいしぶみ芝屋芝叟天明8.8肥前田宮坊太郎仇討、志度寺有名。同材書替狂言の原作たり
木下蔭狭間合戦このしたかげはざまがつせん若竹笛躬寛政1.2大西石川五右衛門と久吉。歌舞伎に入り又改訂さる。影響多し
有職鎌倉山いうしよくかまくらやま菅専助寛政1.5北堀江天明四年田沼騒動を脚色。のち歌舞伎に入り改訂され今日伝存
恋伝授文武陣立こひのでんじゆぶんぶのぢんだて菊水軒寛政2.11筑後大坂陣を脚色。三島お仙の件だけ有名にて歌舞伎へ移入
筆始いろは曾我ふではじめいろはそが筒井半次寛政3.2外記曾我と忠臣藏と菅原を混合せしもの。のち歌舞伎に改訂
彫刻左小刀てうこくひだりこがたな近松柳寛政3.3北堀江石山軍記を脚色。うち左甚五郎身替りの件のみ歌舞伎移入
三拾石艠始さんじつこくよぶねのはじまり近松柳寛政4.5北堀江同題歌舞伎の義太夫化。神道伝八関口平太。河村瑞軒出づ
蝶花形名歌島台てふはながためいかのしまだひ若竹笛躬寛政6.7大西秀吉島津の確執を脚色。小坂部館の段のみ歌舞伎に移入す
持丸長者金笄剣もちまるちやうじやこがねのかんざし近松柳寛政6.3北堀江尼ケ崎屋庄九郎の悪事を脚色。京坂歌舞伎で盛んに移入
日本賢女鑑につぽんけんぢちよかゞみ近松柳寛政6.10北堀江大坂陣を脚色。その一部宇治君苦忠の件のみ歌舞伎に入る
敵討優曇華亀山かたきうちうきゝのかめやま司馬芝叟寛政6.10竹本亀山仇討改作。人形として最も行はれ、歌舞伎にても其まゝ移入
加賀見山廓写本かゞみやまさとのきゝがき中村魚眼寛政8.1竹本同題歌舞伎の義太夫化。加賀騒動鳥居又助、加賀の千代
会稽多賀誉くわいけいたがのほまれ奈河七五三助寛政9.4土佐歌舞伎の合邦仇討を脚色せしもの。大道寺覚太郎唐橋作十郎
忠臣二度目清書ちうしんにどめのきよがき烏亭焉馬寛政10.3[薩摩]忠臣藏後日。平右衛門注進の段のみ歌舞伎に移入伝はる
絵本太功記ゑほんたいこうき近松柳寛政11.7若太夫光秀征伐十三日間の事を脚色。歌舞伎に入り各段とも評判
日吉丸稚桜ひよしまるわかきのさくら近松柳享和1.10北堀江秀吉壮時の事を脚色。歌舞伎にも入り小牧山城中の段有名
箱根霊験躄仇討はこねれいげんいざりのあだうち司馬芝叟享和1.8東芝居飯沼勝五郎の仇討。歌舞伎へも入り九十九邸と箱根の瀧有名
八陣守護城はちぢんしゆごのほんじやう佐川藤太文化4.9大西清正を中心に大坂陣を描く直に歌舞伎に入り一部今日伝存
自来也物語じらいやものがたり並木春三文化6.8角芝居京坂歌舞伎「柵自来世談」の義太夫化。盗賊自来也の義侠
傾城倭荘子けいせいやまとさうし不明文政1.12稲荷同題歌舞伎の一部を義太夫化す「蝶の道行」の景事有名なり
東海道四谷怪談とうかいだうよつやくわいだん不明天保2.7御霊同題歌舞伎の義太夫化。怪談とケレンの人形、五変化を主
生写朝顔話しやううつしあさがほばなし山田案山子天保3.1稲荷歌舞伎の朝顔日記を義太夫化す。後却つて歌舞伎に逆移入
今昔安積沼いまはむかしあさかのぬま不明天保3.8竹田小幡小平次の事を脚色。坂東彦三郎後歌舞伎より暗示を受く
金門五三桐きんもんござんのきり山田案山子天保4.1稲荷歌舞伎の同題脚本を添削義太夫。人形式の因縁話を附加
梅魁莟八総はなのあにつぼみのやつぶさ山田案山子天保7.7稲荷馬琴の八犬伝を二日続に人形化。歌舞伎の大当りによつて計画
花雲佐倉曙はなのくもさくらのあけぼの佐久間松長軒嘉永5.9竹田江戸歌舞伎の佐倉宗吾大当りに刺戟された作。京坂歌舞伎移入
明烏雪の曙あけがらすゆきのあけぼの不明嘉永6.2新築地江戸の明烏大当りによつて脚色された新曲。山名屋の一段物